大阪高等裁判所 昭和55年(ネ)2150号
右当事者間の地位保全等仮処分申請控訴事件について当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とし、参加費用は補助参加人の負担とする。
事実
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人らの申請をいずれも却下する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の主張及び疎明関係は次に記載するほか原判決事実摘示記載のとおりであるからこれを引用する。
(原判決の訂正)
原判決四枚目表八行目「又は」の前に「、「旧合化労連豊年労組」」を加え、同五枚目表四行目「を参加人組合が引継ぐ」を「がそのまま効力を有する」と、同裏九行目「同月」を「同年一二月」と各改め、同七枚目表一行目括弧書を削り、同二行目冒頭に「合化労連豊年製油労働組合と称していたが、」を加え、同裏六行目「ため新組合を結成する」を削り、同二一枚目裏一二行目「第五五号証」の次に「(写)」を、同二二枚目表三行目、同一一行目の各「官署作成部分」の前に「各」を加え、同裏八行目「第二八号証」を「第二八」と改め、同二三枚目表九行目「を提出」の次に「(ただし第四〇、第四一、第六七号証は各写を提出)」を加え、同一一行目「の成立」から「存在」までを削る。
同二一枚目裏七行目「甲」、同末行「乙」、同二二枚目表四行目「乙」、同五行目「丙」、同一二行目「丙」、同裏三行目「乙」、同七行目「甲」、同一二行目「甲」、同二三枚目表三行目「丙」、同一〇行目「甲」、同一一行目上段の「甲」の前にいずれも「疎」を加える。
(当審における控訴人の主張)
別紙一記載のとおり
(当審における参加人組合の主張)
別紙二記載のとおり
(当審における被控訴人らの主張)
別紙三記載のとおり
(当審における疎明関係)…略
理由
一 当裁判所は被控訴人らの本件仮処分申請を認容すべきものと判断するが、その理由は次に記載するほか原判決の説示する理由と同一であるからこれを引用する。当審で取調べた各証人の証言及び疎丙号各証によっても右認定を覆すに足らない。
(原判決の付加、訂正)
1 原判決理由中の甲、乙、丙号証は、疎甲、疎乙、疎丙号証と読み替える。
2 原判決二四枚目表九行目「証言」の次に「、当審証人今村清治の証言により成立の認められる疎甲第七四号証」を加え、同裏九行目「を新組合との間に引継ぐ」を「がそのまま効力を有する」と改める。
3 同二五枚目表末行から同裏七行目までを「で「合化労連豊年製油労働組合存続の通知」をなし、同月一一日付書面で役員名を通知し、また、同日付「要求書」で参加人組合と同等に取扱い参加人組合との間に差別をしないこと及び組合事務所の貸与、掲示板の設置等の要求を申し入れ、かつ同日付書面でこれらにつき団体交渉の申し入れをしたこと、」と改める。
4 同二六枚目表一行目「分派行動」の前に「合化労連脱退は一括脱退である、債務者らから脱退の通知はない、参加人組合が除名した事実もなく、債務者らは参加人組合員であり」を加える。
5 同二六枚目裏一一行目「経緯等」の次に「について」を加える。
6 同二七枚目表六行目「ものと認めるの外はない」を「ことが一応疎明される」と改めたうえ、そのあとに次のとおり加える。
「もっとも、控訴人及び参加人組合は、被控訴人らの参加人組合からの脱退、新組合結成の主張に対し様々の疑問点を指摘しているところ、たしかに前掲(証拠略)は「訣別申入れ」と題する書面であってその文面からも一義的には脱退届とは解しえない面がないとはいえない。しかし、脱退は、もともと要式行為でなく、参加人組合においても脱退届の様式を定めていたことについてなんらの疎明もないから、どのような方法によっても、被控訴人らが参加人組合に対して参加人組合から離脱する意思を明らかにしていればよく、とくに本件におけるごとく、既存組合の運動方針に従えない組合員が集団で既存組合を離れて新組合を結成するという場合には、その新組合を結成したことが明らかにされればその組合員らは既存組合を脱退したものとみなすのが相当であるところ、被控訴人らは右「訣別申入れ」によって参加人組合から離脱する趣旨を明らかにしているし、また前掲(証拠略)でも、被控訴人らは「別組合である豊年労組……」との、被控訴人らが参加人組合を離れてこれとは独立した新組合をすでに結成している趣旨をうかがわせる文言を使用しており、その他控訴人及び参加人組合の当審における主張に徴して疎明を精査してみても、被控訴人らが右「訣別申入れ」の時点で参加人組合を脱退したとの一応の疎明がされたとの認定判断を左右するにいたらない。さらに疎明を総合すれば、被控訴人らが控訴人または参加人組合に対し、被控訴人らの組織が従来どおり合化労連豊年労組を構成して存続するものであって、現在の参加人組合に属する組合員らは秋山正義らのグループとして脱退したものである旨を主張したり、また被控訴人らのグループの一員である北村らが、控訴人の右グループは参加人組合から脱退したのかとの質問に対して、脱退したものではない旨回答したことがあるが、しかし同時に、北村らを含む被控訴人らの右言動は、自己らの組織こそ従来どおり合化労連の方針を厳守した正統組合であることを強調する余りのいわば肩肘の張った表現であり、実質的には被控訴人らが参加人組合から離脱して新組織を結成しているとの趣旨は右言動によっても明らかにしていることがうかがえるから、右言動をもって、前記認定判断を左右するものということはできない。被控訴人らにおいて参加人組合からの脱退を主張することが、控訴人のいうように禁反言ないし信義則に反するとはいえないことは、右にみたところから明らかである。他に禁反言ないし信義則違反の主張を首肯させる事情のあることをうかがわせる疎明はない。(なお、念のため付言すると、疎明のうちには、被控訴人らが参加人組合にとどまって内部から参加人組合を変革しようとしたこと、要するに被控訴人らの参加人組合脱退の事実と抵触する事実をうかがわせるものがないわけではなく、この点につきさらに検討を加えることも考えられる。しかし、本件ではすでにかなり多量の疎明がされており、これを総合すれば、被控訴人らが参加人組合を脱退した事実をうかがわせる疎明の方が優勢であり、仮処分事件である本件においては、この程度で被控訴人らが参加人組合を脱退したものと認めて、判断をすすめるのが相当である。右の点についてのさらにくわしい検討は、本案訴訟に委ねるほかないものである。)」
7 同二七枚目表八行目から同二八枚目表四行目までの全部を次のとおり改める。
「前認定のとおり、債権者らが、新組合を結成したのは昭和五三年一〇月八日であり、参加人組合を脱退したのが同月一一日であり、参加人組合が債権者らを除名したのは同年一二月一四日である。
のちにもみるとおり、被用者は労働組合を結成する自由を有すると同時に、結成しない自由、これに加入しない自由を有するから、被用者が労働組合から脱退すること自体は自由であり、その脱退が使用者の強制によるものであったり、またもっぱら当該労働組合の団結権を侵害したりする意図に出たものであるなどの特別の事情のない限り、その効力を否定されることはない。ただ、本件のごときユニオンショップ協定がある場合には、脱退が解雇につながることがあるため、事実上脱退の自由が制約をうけることはあるが、このことは労働組合脱退の自由をなんら否定するものではない。本件においては、被控訴人らの参加人組合からの脱退につきそれを無効とするような特別事情は疎明を総合しても認められないから、被控訴人らの脱退は有効である。」
8 同二八枚目表五行目「3」を削り、同裏四行目「仮に」を「当裁判所は」と改め、同五行目「との立場に立つ」を「との見解をとらないが、かりにその見解をとる」と改め、同二九枚目表四行目の次に改行のうえ次のとおり加える。
「ところで本件の被控訴人らの参加人組合から脱退のように、労働組合の運動方針と相いれない組合員が、新組合を結成する目的のもとに集団で組合を脱退し、脱退と同時にまたは合理的期間内に右目的どおりに自主的に新組合を結成した場合には、既存の労働組合と使用者との間に締結されたユニオンショップ協定は、脱退者に対しては効力を及ぼさないものと解すべきである。既存の組合が多数の組合員を擁し、新組合が少数の組合員しか擁しないとしても、ともに自主的に結成されたものである以上は、両組合の各団結権が平等に対立して併存するものであり、各団結権相互の間に優劣をつけることはできないからである。このように解すると、控訴人のいうようにユニオンショップ協定の効力を弱めることは否定しがたいところであるが、しかしこのような場合にまでユニオンショップ協定の効力を脱退者に及ぼしてその脱退者に既存組合への加入を強制することは、もともと個々の被用者に保障されている労働組合組織選択の自由、ひいて脱退者がすでに新組合を結成して現実に行使している団結権を侵害する結果を容認することになるのであり、このような解釈はとることができないというほかない。本件においては、前記のとおり、被控訴人らは参加人組合を新組合結成のため脱退し、脱退と同時に新組合を自主的に結成しているのであるから、本件ユニオンショップ協定に基づいてした控訴人の本件解雇は、その効力を有しないものというべきである。
もっとも、参加人組合は被控訴人らを除名している。しかし、右除名は被控訴人らが参加人組合を前記のとおり有効に脱退して新組合を結成したのちにされたものであるから、無効であり、被控訴人らが参加人組合を除名されたことを前提として控訴人がユニオンショップ協定に基づいてした本件解雇も、右除名が無効であって、他に解雇の合理性を裏づける特段の事情も疎明されていないから、無効である(最二小判昭和五〇年四月二五日・民集二九巻四号四五六頁の趣旨参照)。なお、さらに、労働組合を脱退したのちにその脱退者に対して有効に除名することができる場合があるとの見解がまったく考えられないわけではないが、かりにこの見解によった場合でも、本件のごとく被控訴人らが新組合結成のため参加人組合を脱退し、脱退と同時に、すなわち除名前にすでに自主的に新組合を結成している場合には、ユニオンショップ協定の効力はもはや脱退者すなわち被除名者である被控訴人らには及ばないと解すべきである。すなわち、このような場合には、新組合の結成を目的とした当該組合員の脱退、新組合結成にいたるまでの行動の全体が既存組合において統制違反と評価され、ついに除名処分がされることになることが多いと考えられるが(本件でも、疎明によれば、そうした事情がうかがえる。)、この場合にユニオンショップ協定の効力が脱退者すなわち被除名者に及ぶと解するときは、脱退者が既存組合を脱退して結成した新組合においていったん現実に行使している団結権が、その後の除名によって侵害(覆滅)されるという結果を容認する(要するに、前述した被用者の組織選択の自由に基づく新組合による団結権の行使を否定する結果を容認する)ことになるものであって、採用しがたい解釈というべきである。もっとも、脱退の場合でも、除名の場合でも、既存組合を離脱した者が、ユニオンショップ協定によって解雇されることを免れるだけの目的のために、名を新組合の結成にかりながら、実質的には実態のある労働組合組織をつくっていないような事情のあるときは、脱退者ないし被除名者にとって保護されるべき団結権は実質的に存在しないから、このような脱退者ないし被除名者に対してはユニオンショップ協定の効力が及ぶものと解すべきであるが、本件においては右事情のあることについて疎明はなく、かえって前認定のところから、被控訴人らは参加人組合との信条、運動方針との相違から参加人組合を離脱して実態のある新組合を結成したことがうかがえるから、被控訴人らに対してはユニオンショップ協定の効力は及ばないものと解するのが相当である。
以上のとおりであって、いずれにしても、控訴人が参加人組合との間のユニオンショップ協定に基づいてした本件解雇は、無効というほかない。」
二 そうすると、被控訴人らの申請を認容した原判決は相当であり、控訴人の本件控訴は理由がないから、これを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九四条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 岨野悌介 裁判官 渡邊雅文 裁判長裁判官朝田孝は、退官につき署名押印することができない。裁判官 岨野悌介)
別紙一 控訴人の主張
一 脱退、新組合結成の主張に対する反論の補足
被控訴人らは、合化労連からの組織としての脱退は合化中央執行委員会の承認が必要であり、昭和五三年一〇月二四日までは参加人組合は合化労連傘下の組合であると考えていたのであるから、合化労連に結集することを目指していた被控訴人らが、いまだ参加人組合が合化労連傘下にあった同月八日の段階において参加人組合から脱退して新組合を結成することはありえないし、合化労連の回答がなされる以前に予め参加人組合から脱退する必要もなかったものである。換言すれば合化労連が参加人組合の組織脱退を認めるまでは、被控訴人らは組合内にとどまり、活動をする必要はあっても、同組合から脱退し、新組合を結成する必要はない。被控訴人らの考え方や言動からみるならば、一時的にしろ合化労連から離脱するということは絶対にありえないことである。
被控訴人らは被控訴人らのグループと参加人組合とは別組合であると云うが、そのいわんとするところは被控訴人らのグループこそ従来どおり合化労連豊年労組に残留してこれを継承したということなのであって、一〇月八日に被控訴人らが新組合を結成したがために被控訴人らのグループが参加人組合と別組合となったと述べていた訳ではない。
以上のとおり、被控訴人らは、昭和五三年一〇月二四日までの間に参加人組合から脱退して新組合を結成する必要がないばかりか、かえってそれをなしえない事情を抱えていたものであり、現に、脱退、新組合の結成はなされていないのである。
被控訴人らは、「訣別の申入れ」及び「存続通知」に記載しているとおり、参加人組合内における全員投票手続に組合規則違反があるから無効である旨主張している。若し仮に、被控訴人らのいう如く、「訣別の申入れ」が脱退の意思表示であり、「存続通知」が新組合結成の通知であるとするならば、既に組織から離れ、別の組織に所属している被控訴人らが既に離れた筈の組織内の手続につき言及する必要性は全くない。被控訴人らがこのような態度をとること自体被控訴人らが参加人組合にとどまっていたこと、換言すれば脱退、新組合の結成など無いことの証左である。被控訴人らが右手続を問題にしたのは、合化労連豊年労組から脱退して新組合を結成するからではなく、合化労連豊年労組の存続を図ったからにほかならない。従って、被控訴人らの行動は「再建第二四回大会」を開催したうえ「組織を引継ぎ運営」するのであり、合化労連に対しては「引継ぎ加盟していく」のである。これに呼応して合化労連の回答は、組織は「従来通り存続する」し、秋山正義らは組織から「グループとして脱退」した、ということになるのである。いずれにしても新組合結成というかたちでは処理されていないことは明白である。
仮に被控訴人らの行動が、脱退、新組合結成、合化労連への新たな加盟であるとすれば、合化労連は右のように組合が「存続」するとか、秋山正義らが「グループとして脱退」したなどということを回答書で述べる必要は全くなく単に参加人組合の組織としての脱退を承認する旨述べれば必要かつ十分であったわけであり、被控訴人らに対しても新しい組織としての合化労連豊年労組の加盟を認めるとの意思表示がなされて然るべきであった。合化労連の右回答は、合化労連中央執行委員会も被控訴人らの行動を、脱退、新組合結成、合化労連への新たな加盟とは考えなかったことの証左である。
被控訴人らのグループは、控訴人から昭和五三年一〇月一六、一七日に、参加人組合から脱退して新組合を結成したのかどうかと問われたのに対し、「脱退したものでない、引継いだのだ」と明確に脱退を否定している。
控訴人が本件除名処分の妥当性を判断し、かつ本件解雇処分の可否を決するにあたっては、右事実は重要な判断要素となっているのである。控訴人は、同月二三日被控訴人らのグループに対し、控訴人としては「被控訴人ら六名は豊年労組の組合員であり、合化労連豊年労組は存在しない」との考えであることを伝えたにも拘らず、被控訴人らは、控訴人及び参加人組合に対し、本件解雇処分を受けるに至るまで脱退、新組合の結成を明確にしたことがないのであるから、被控訴人らが脱退、新組合結成の主張をすることは信義則に反する。
二 脱退の不成立
被控訴人らは、「訣別の申入れ」をもって参加人組合に対する脱退の意思表示であると主張するが、原審でも主張したとおり、右文書には被控訴人らが参加人組合から脱退するという意味が全くあらわれておらず、かつ被控訴人らが口頭で脱退の旨明言したこともなく、かえって、控訴人側の問い合せに対しては脱退ではない旨明言している。
三 本件ショップ協定の適用についての補足
ユニオン・ショップ協定締結組合から脱退後直ちに新組合を結成したりあるいは別組合に加入してユニオン・ショップ協定締結組合から脱退した場合には、最早ユニオン・ショップ協定の効力は及ばないとの見解があるが、このような考え方は労組法七条に基づくユニオン・ショップ協定を実質的に空文化するものであって、ユニオン・ショップ協定を適法とする限り納得し難いものである。
右のような解釈では、ユニオン・ショップ協定が存在するにも拘らず事実上無制限に脱退の自由を容認することとなり、同協定締結組合の団結及びこれに基づく組織強制を無視する結果となる。そもそもユニオン・ショップ制度は、少数者の積極的、消極的団結権をある程度犠牲にしたうえで多数組合の組織強化を図ることを目的としたものといわなければならず、容易に脱退が認められるというのであれば、ユニオン・ショップ制度の存在意義を喪失させるのと同様となる。
そこで、仮に少数者の消極的団結権、積極的団結権(脱退、新組合の結成)が尊重されなければならない場合があるとしても、原審で述べたような真にやむを得ない事情もしくは正当な理由による右権利の行使でない限り、ユニオン・ショップ協定の効力はなお右少数者にも及ぶものと解すべきであり、そうでないと憲法二八条に定める団結権の保障及びこれに基づくユニオン・ショップ協定の合法性の精神を尊重した妥当な結果を得ることができず、ユニオン・ショップ制度は崩壊する。
別紙二 参加人組合の主張
一 被控訴人らの主張に対する反論
被控訴人らは、参加人組合の事情聴取の過程の中で「組織が別だ」「豊年労組の人間から事情聴取を受けるいわれはない」等と述べていたこと、及び被控訴人らが「団体交渉」を要求し、「組合事務所、掲示板、組合費チェックオフ」等を要求していたこと等をもって別組合になったことは明らかであって、訣別申入書は脱退の意思表示であり、一〇月八日に新組合を結成したのであると主張している。
参加人組合による事情聴取の過程において被控訴人らが「組織が別だ」との発言をしていたことは事実であるが、「別組合である」との発言は一言もなく、この点に関する被控訴人らの主張は事実に反する。「組織は別だ」「お前らとは話をしない」という意味は、合化脱退の参加人組合の全員投票手続は無効であるから、合化豊年労組は従前どおり存続している、然らずとしても合化労連脱退は一〇月二四日の合化本部の決定があるまでは成立しない、それなのに九月二五日から名称を勝手に豊年労組と改称し、合化労連から脱退したと主張し行動している秋山正義ら執行部とは話をしないということである。
そこでいう「組織」とは「労働組合」を意味するのではなく「秋山正義ら」当時の組合執行部を構成しているグループを指していたものであり、合化脱退が成立していないのに合化脱退という勝手な行場をとる秋山正義ら執行部は認めないとの主張及び態度であったのである。団交要求等の行動も右の趣旨の行動である。また組合事務所等の物的設備を要求したことも、秋山正義らが現実に物的設備を使用しているから別設備を要求したに過ぎないのであって、別組合であったことの根拠になるものではない。
二 脱退の意思表示の不存在
被控訴人らは訣別申し入れ書によって参加人組合からの脱退の意思表示をしたと主張しているが、組合脱退については脱退の意思表示が何人にも疑義をさしはさむ余地のない明白なものでなされるべきである。本件訣別申し入れ書が脱退の意思表示とは認められないことは原審で主張したとおりであるが、「戸野弘」名の記載は参加人組合の吉川書記長から指摘を受けて文書を持参した金沢がその場でボールペンで記載したものであって、人の意思の有無が極めてあいまいであり、本人らの署名捺印もなく名前が羅列されているにすぎないものが、個人の意思表示となりうるはずがない。
被控訴人らのグループが参加人組合から脱退する意図であれば、昭和五六年二月の脱退者達が提出したような個人の意思を明確にした個人の脱退届が提出された筈であり、被控訴人らが個人の脱退届を提出しなかったのは、当時参加人組合から脱退する意思のなかったことの証左である。
逆に被控訴人らは脱退していないと積極的に脱退否定の言動をとっていたのである。昭和五三年一〇月一六、一七日の両日にわたり控訴人望月総務部長と被控訴人らグループのうちの北村らが話し合った際、同部長の「脱退したというのなら話しは分るが」との質問に対し、北村らは「自分達は組合を脱退したのではない」とはっきり明言している。
別紙三 被控訴人らの主張
一 被控訴人らが合化労連豊年労組を結成するに至った動機
被控訴人らは、控訴人が日本生産性本部へ委託して実施した生産性向上教育によって労働組合の体質が変ってしまう以前の参加人組合においては、中央執行委員長を勤めるなど中心的活動家であった。ところが、右教育が実施されて以降、参加人組合は控訴人側の提案した各合理化攻撃に積極的に賛成し、控訴人の人員削減に協力してきた。
被控訴人らは、このような組合を批判し、反合理化を主張してきたものであるが、その後参加人組合が合化労連から脱退することを画策するに至り、右脱退は参加人組合自体が完全に御用組合化することであって最早内部にとどまって活動するよりむしろ新たな組合を結成すべきであると考えるに至った。
かように合化労連の反合理化の基本方針と参加人組合の合理化に協力し企業性を重視する労働運動との間には決定的な差異があり、これが参加人組合の合化労連脱退につながっているのである。
二 再建準備委員会の開催について
昭和五三年一〇月八日に被控訴人らが再建大会を開催したことは明白である。その準備の為被控訴人らが連絡をとり合い話し合っていたことは当然であるから、同月二日に被控訴人戸野が参加して再建準備委員会を開いたことも事実である。当日被控訴人らは午前中合化労連本部で新組合の結成について相談し、午後二時頃に清水市へ戻り再建大会に向けて会議を開いた。原審における証人金沢、証人漆畑の証言内容の喰違いは、被控訴人戸野が会議に遅れて出席したが、その出席した時刻についての記憶の差異や、当日右会議以前にも会議が開かれているところ、その会議の開始時刻を被控訴人戸野が出席した会議の開始時刻と考えているかどうかによって生じたものにすぎないのであって、本質的なものではない。
三 控訴人らは被控訴人らが脱退届を「訣別申し入れ」としていることや、「組織を継承」したという言葉を使用していることから被控訴人らが別組合を結成したものではないと主張する。
しかし、被控訴人らは再建大会結成後、控訴人に対し、団体交渉の申し入れをし、組合事務所の要求等をしているのであるから、別組合として行動していることは一目瞭然であったし、その後の参加人組合からの被控訴人らに対する事情聴取においても、「別組合であるから、組織と組織としてなら話合うが、組織と個人としてなら話合わない。」との態度をとっていたし、参加人組合の除名手続中の事実経過の中にも被控訴人らが別組合であると主張していたことが明記されていることからも、被控訴人らが別組合を結成したことは明らかである。
従って参加人組合は、被控訴人らがいずれも別組合である合化豊年労組の構成員であることを十分知悉した上で除名処分をしたものであるが、既に参加人組合の組合員でなくなった者に対しては同組合の統制権が及ばないのは当然であるから、右除名処分は無効である。
四 また、控訴人らは、被控訴人らは合化労連脱退手続に違法があるから参加人組合はいまだ合化労連豊年労組であると考え、分派活動をしていた旨主張する。
しかし、被控訴人ら三名は、脱退手続に違法があるとは考えていたが、そのことを理由として不服申立をしたことはない。清水の三名を含む十数名が不服申立をしているが、その時点では彼らはいまだ参加人組合の組合員であったから、組合員としての資格と権利により民主的手続を欠く参加人組合の姿勢を批判したにすぎない。
また、脱退手続が違法であるから参加人組合の合化労連からの脱退は無効であるとの主張はしたことはなく、別組合として活動していたものであって、分派活動と評価される行動をとった事実はない。
五 現在まで合化労連豊年労組は、その実体を有した労働組合として合化労連は勿論、地域の諸団体からも社会的に承認され活動してきたものであるし、組合員数も新たに六名の加入を見て現在一二名となっている。
六 その他控訴人らの当審における主張は争う。